あなたはそう、まるで。
(~1番サビ直前の一部)
宵闇に包まれた町並みは、しかし常にない賑やかさを奏でていた。
今日はお祭りなんですよ、と宿の女将に教えてもらった途端、彼の師は子供のようにはしゃいで、荷物の整理もそこそこに「曽良君!お祭り行こう!」と駆け出した。
実年齢に比べ、精神年齢はその辺りの子供と大差ない師を咎めるのは、何時だって同行人である自分の役目。
お決まりのように「煩いですよ」と断罪しつつ、それでも何だかんだで付き合ってやるのだから感謝されてもいいだろう。
基本的に、人混みは好ましくない。
特にこういう、自然と解放された気分になってしまう行事では、矢鱈と喧騒が耳に障る。
(全く……、何が楽しいんだか。)
人々も、一歩前をふらふらと覚束ない足取りで進む師も。
祭りだからと言って、特別な事などある訳ではないというのに。
余計な出費をするだけ、子供達が親にねだっている狐の面も、実用性には乏しい。
花火を見るのは別に構わないが、それとて子供のように気分が高揚するには至らなかった。
林檎飴を見るよりも、金魚掬いを見るよりも、自分は確実にネジの抜けている師を監視する方が重要だった。
少し目を離すと、何処に消えるか解らない。
人より俳句の才に恵まれただけの、一見ただのくたびれた中年だ。この人混みで見失ってしまえば、見付け出すのは容易ではないだろう。
(一番サビ付近)
それは、繰り返される悪夢だった。
……叶わぬ事に絶望し続けた、願望だった?
彼の首を絞める夢。
なんて、生々しい。なんて、おぞましい。
嗚呼、なんて……満たされる。
細くて白い喉が跳ね上がり、奪われていく酸素に何にも縋れない指先が小さく震えていた。
こんな時でさえ、彼は自身を守る為にその手を振り上げる事をしないのか。
どこまでも愚かで滑稽な師に、もう嗤いさえ零れなかった。
ただ、少しだけ。
本当に少しだけ、眦に熱が滲んでいくだけ。
...二番まで曽良ターンで、「ア.レグ.ロ~」「僕.のいな.い朝は~きっとそ.んな世.界だ」だけ、曽良に対して最初で最後の判決を告げる芭蕉さんのターン。
「すくわれぬ」は二つの意味で。
替え歌自体は暗かったのですが、私の中では一番ラブラブな蕎麦だと思われた。
どうやっても、元禄蕎麦は曽良→芭蕉なので。
たとえ結ばれたとしても、少しすれ違っているのが理想。PR