ああ、苦しい。
(懐かしい…あたたかい、優しい、君の)
初めて君が作ってくれたスープ。
あれから何年も経っているのに、ちっとも変わらない。
何も食べられなかったのに、これだけは喉に通る。
その味を確かめる度に、ぼたぼたとみっともなく涙が零れて、頬を伝い、スープの中に落ちていく。
これでは折角のスープがしょっぱくなってしまう、と思ってしまうけれど、もう抑え切れない。
「あ……ぅ…っ、ひ…く……」
空腹なんて感じなかったのに。
ただ、言葉にできない気持ち悪さとか、音もなく覆い隠す暗闇とか、何も聞きたくなくて塞いだ耳とか。
何もかもが虚無で、いっそこのまま死んでしまえたら楽なのに、と何度も思った。
眠るように終わっていけたのなら、と。
けれど。
彼が自分の為に作ってくれたスープは、昔と変わらなくて、とても優しくて。
……彼が、今も、こんなだめな自分を想ってくれているのだと伝わってくるから。
「おいしいです……魔法使い君……」
聞こえないと知りつつも、か細く叫ぶのだ。
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