「メガネ外した方が可愛いよ、ハニー」
こんな男が、純白の翼と衣を纏い、天使などと名乗っているなんて、(魔王である自分が言うのも何だが)世の中終わっている。
そう思いつつも口にしないのは、正直この男との言葉の応酬にさえ倦怠感を覚えているからだ。
近寄るな、触るな、メガネを外そうとするな。
ありとあらゆる拒絶の言葉が脳内に渦巻くが、所詮それも音になる事はない。
歪な爪先が微かにレンズに擦れ、鼓膜に煩わしく響く。
ああ、本当に……忌々しい。
「……その嫌そうな顔やめてほしいなー」
視力の悪い人間(不適切)が目を細めるのは癖のようなものだ。
すっかりぼやけた視界の中で、それでも憎たらしい天の使いが、その口元を歪めていたのだけは解って。
「はなれてください、露出狂」
思わず、持っていたぬいぐるみを抱き寄せた。
(ああ、本当に、本当に忌々しい!!!!)
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