報告書を持って応接室に訪れた草壁だが、そんな彼を出迎えたのは自分の上司(中学生でその表現はおかしいかもしれないが、他に良い言葉が思い付かない)ではなく、小さな蜂蜜色だった。
「あ、ヒバリさんは今見回りに行ってますよ?」
風紀委員である自分よりも何故かこの空間に馴染んでしまっている少年は、俄かに信じられないのだが、あの並盛最強の風紀委員長・雲雀恭弥の恋人である。
そういう関係に至るまでの過程を見守ってきた草壁としては、雲雀の人間らしい部分を引き出してくれた彼―沢田綱吉に対して純粋な感謝を抱いていた。
「そうですか。では、また後ほどお邪魔します。」
この様子だと、どうやら今日は二人で一緒に帰るらしい。
何とも微笑ましいものだと頬を緩ませ、草壁は踵を返した。
「草壁さん、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……。」
しかし、綱吉に唐突に呼び止められる。
「自分に…ですか?」
「はい…、えっと、ヒバリさんのことで。」
少しだけ頬を赤らめて話すその様は、小動物を思わせる。
ダメツナとからかわれたり、暫く話題になっていた奇行(下着一枚で校内を走り回るだの何だの)の所為で隠れているが、沢田綱吉という少年はなかなか愛らしい外見をしているのではなかろうか。
自分が面食いだと思った事はないけれど、雲雀がやたらと構いたくなる気持ちは理解できる。
特にこの頬を染めた表情は、どんな相手でも心を揺さぶるものがあった。
草壁が幾分か優しい声で続きを促すと、綱吉はおずおずと口を開く。
「あの…、草壁さんは、ヒバリさんの携帯の待ち受けって見たことありますか?」
「……は?」
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