※何やかんやで、魔王が仲間になりました。
「あ、すみません。ちょっと寄り道させてもらっても構いませんか?」
旅支度をしているところで、徐に彼がそう話を切り出してきた。
敵として対峙していた頃よりもずっと穏やかな声音。
「んー?別にいいけど、何処行くんだ?」
「勇者さん達との戦いでメガネが割れたので、新しい物を買いに行こうと……」
「あれ?でも、メガネなくても戦ってましたよね?」
戦闘の最中、勇者の攻撃によって確かに彼のメガネは割れていたが……。
「ああ、あれは伊達メガネです。俺、視力は普通ですから」
「じゃあ、メガネいらないって!邪魔だろ、そのままでいろよ」
未成年お断りの本を鞄に詰め込んでいた少年は、そう言って彼の肩を叩く。
しかし、彼は露骨に顔を歪めて……。
「嫌です。メガネは必要なんです!」
珍しく声を荒げて、少年の提案を拒否した。
この反応には当然、少年だけでなく他のメンバーも驚いた。
※でも結局何やかんやで、メガネは買えませんでした。
「あっれー、ハニー。メガネ外したんだー」
彼にとって最も会いたくない人物の登場。
薄いレンズが取り払われ、自分とこの男の眼差しを隔てるものは何一つない。
「うんうん、俺の言った通り、メガネ外した方がかわ」
「滅べ」
(だから外したくなかったんですよ!!!)
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